こんなうつくしい歌声が、

こんなうつくしい歌声が、地の上の人間にあるでしょうか。あのいちばん下の人魚のひいさまは、そのなかでも、たれおよぶもののないうつくしい声でうたいました。みんないちどに手をたたいて、その歌をほめそやしました。そのせつな、さすがにこのひいさまも心がうかれました。それは、地の上はもちろん、海のなかにもまたふたりとないうつくしい声を、じぶんがもっていることが分かったからでした。でも、すぐとまた、上の世界のことをかんがえるいつものくせに引きこまれました。あのうつくしい王子のことをわすれることはできませんし、あのひととおなじに、死なないたましいをもっていないことが心をくるしめました。そこで、こっそり、ひいさまは、おとうさまの御殿をぬけだしました。そうして、たれもそこで、歌って、陽気にうかれているまに、しぶんひとり、れいのちいさい花壇のなかに、しょんぼりすわっていました。そのとき、ひとこえ角笛(つのぶえ)のひびきが、海の水をわたって来ました。その音(ね)をききながら、ひいさまはおもいました。


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